皆さま、こんにちは!

 

「地球温暖化」やそれに伴う「脱炭素」などが話題になる中、「環境債」という言葉を耳にする機会も増えてきました。

しかし、それが一体何なのか、ご存知ない方も多いのではないでしょうか?

今回は環境債について、その概要や種類、また、企業が発行するメリット、投資するメリット、そして、発行方法についてご紹介します。

 

環境債(グリーンポンド)とは?

環境債とは、再生可能エネルギー事業、エネルギー効率、空気や水・土の汚染防止及び抑制、温室効果ガス排出量削減、環境に配慮した生産技術やプロセス改善、廃棄物管理、生物多様性など環境問題の解決に資する事業に使途を限定して資金調達する債権のことで、「グリーンボンド」とも呼ばれています。

 

2007年に欧州連合(EU)の開発銀行である欧州投資銀行(European Investment Bank)が発行した気候変動への認知度を高めるための債券(Climate Awareness Bond)や翌年2008年に世界銀行が発行した債券など、その基本は欧州を源流としています。

日本では2014年に日本政策銀行が初めて発行し、事業会社では他業界・他社に先駆けて、野村総合研究所が2016年に初めて発行しました。なお、その環境債の発行件数は年々増加し、2020年には年間発行総額が1兆円を突破し、2021年には約1.8兆円に達しました。

国内の年度別の発行状況(総額・件数)は以下のグラフの通りです。

※環境省管轄グリーンファイナンスポータル(2022年2月)サイトより引用

 

環境債(グリーンポンド)の種類

環境債に類似する債券に、「SDGS債(ESG債)」や「その他の債券」があります。ここでは、環境債とSDGS債(ESG債)・その他債券との違いや環境債の4つの種類をご紹介します。

まず、「SDGs債」との違いになりますが、「SDGs債」は大きく分けて、「グリーンボンド」、「サステナビリティボンド」、「ソーシャルボンド」 といった名称に分類されます。債券の種類別に概要や図にすると以下の通りです。

【代表的なSDGS債券】

つまり、「環境債」は、「SDGS債(ESG債)」の一部であり、グリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券になります。

 

続いて、環境債の中にある4種類の債券についてご紹介します。

いずれの種類も「グリーンプロジェクト(環境改善事業)に必要な資金を調達するために発行する債券」であるのですが、償還方法に大きな違いがあります。

 

1.標準的なグリーンボンド(Green Use of Proceeds Bond

「標準的なグリーンボンド」は、特定の財源によらず、発行体全体の現金や現金同等物などのキャッシュフローを原資として償還を行う債券です。

 

2.グリーンレベニュー債(Green Use of Proceeds Revenue Bond

グリーンレベニュー債は、調達資金の充当対象となる公的なグリーンプロジェクトのキャッシュフローや当該充当対象に係る公共施設の利用料、特別税等を原資として償還を行う債券です。

例えば、外郭団体が行う廃棄物処理事業に必要な施設の整備や運営等を資金使途とし、当該事業の収益のみを原資として償還を行う債券がこれに該当します。

 

3.グリーンプロジェクト債(Green Use of Proceeds Project Bond

グリーンプロジェクト債は、調達資金の充当対象となる単一又は複数のグリーンプロジェクトのキャッシュフローを原資として償還を行う債券です。

例えば、専ら再生可能エネルギー発電事業を行うSPCが発行する、当該事業に必要な施設の整備や運営等を資金使途とし、当該事業の収益のみを原資として償還を行う債券がこれに該当します。

 

4.グリーン証券化債(Green Use of Proceeds Securitized Bond

グリーン証券化債は、グリーンプロジェクトに係る通常複数の資産(融資債権、リース債権、信託受益権等を含む。)を担保とし、これらの資産から生まれるキャッシュフローを原資として償還を行う債券です。

例えば、ソーラーパネル、省エネ性能の高い機器、設備、住宅等、電気自動車や水素自動車等の低公害車などに係る融資債権等を裏付けとするABS(資産担保証券)等がこれに該当します。

 

環境債(グリーンポンド)を発行するメリット

環境債の発行体は、事業会社だけでなく、国際機関、中央政府、地域の自治体、金融機関など様々です。ここでは、環境債を発行するメリットを4つご紹介します。

 

1.サステナビリティ経営の高度化

環境債に関する取組を通じて、事業会社等の組織内のサステナビリティに関する戦略、リスクマネジメント、ガバナンスの体制整備などにつながる可能性があります。これは、TCFD等のESG情報開示要請に応える一助にもなり、こうした取組は、発行体の中長期的なESG評価の向上、企業価値の向上にもつながります。

 

2.グリーンプロジェクト推進による社会的支持の獲得

環境債発行により、グリーンプロジェクト推進に積極的であることを社会にアピールすることができ、それを通じて社会的な支持の獲得や業績の向上にもつながります。

 

3.新たな投資家との関係構築による資金調達基盤の強化

環境債発行により、地球温暖化をはじめとした環境問題の解決に資する性質を高く評価する投資家等とのより良い関係や新しい投資家との関係を築くことができ、ひいては資金調達基盤の強化につながります。

 

4.比較的好条件での資金調達の可能性

例えば、新興の再生可能エネルギー事業者や新興会社など、金融機関との関係が十分に構築できていない場合、希望した条件で融資等が受けられないことがあります。そのような際、自社が行うしっかりとした事業性を有する再生可能エネルギー事業などから得られるキャッシュフローを利払いや償還の原資とする環境債等を発行することにより、再生可能エネルギー事業などに関する事業性評価に精通した投資家等から、比較的好条件で資金を調達することにつながります。

実際、世界では、環境債の利回りが普通債よりも低いにも関わらず、グリーニアム現象(発行条件が同じである一般的な債券に比べて環境債の価格が高く (利回りは低く)なる現象)が発生しています。また、その発行額は年々増加傾向にあります。

 

 

環境債(グリーンポンド)に投資するメリット

続いて、環境債に投資するメリットを5つご紹介します。

 

1.ESG投資の一つとしての投資

環境債への投資を行うことで、発行体が債務不履行にならない限り安定的なキャッシュフローを得つつ、グリーンプロジェクトへ積極的に資金を供給し、それを支援していることをアピールすることができ、それを通じて社会的な支持の獲得につながります。

 

2.投資を通じた投資利益と環境面等からのメリットの両立

環境債への投資を行うことで、債券投資による利益を得ながら、資金供給を通じ「環境面等からの3つのメリット(地球環境の保全への貢献:温室効果ガスの削減や自然資本の劣化防止、グリーン投資に関する個人の啓発:個人の関心向上による経済全体のグリーン化、グリーンプロジェクト推進を通じた社会・経済問題の解決への貢献:エネルギーコストの低減、地域活性化、災害時適応力)」の実現を支援し、持続可能な社会の実現に貢献できます。

 

3.グリーンプロジェクトへの直接投資

「パリ協定」を踏まえ、今後益々、世界が更なる温室効果ガス削減に取り組んでいく中、再生可能エネルギー事業や省エネルギー事業等のグリーンプロジェクトには、大きな投資需要があると考えられます。このような事業に関連する環境債へ投資することにより、このような事業に直接関連した投資を行うことができます。

 

4.オルタナティブ投資によるリスクヘッジ

プロジェクトボンドとして発行される環境債については、株式や債券等の伝統的資産との価格連動性(相関性)が低いとされるオルタナティブ投資の側面を有するため、分散投資によるリスク低減の有効な投資先の一つになり得ます。

 

5.エンゲージメントの実施

環境債の場合、発行体から開示される環境改善効果等に関する非財務情報を分析・評価し、環境改善効果の持続性や環境に対するネガティブな効果等を踏まえ、環境改善効果の有無及びそのインパクトの大きさについて効果的なエンゲージメントを実施することが可能となります。このような取組が、発行体のサステナビリティの向上と投資家にとっての中長期的な投資成果の向上という好循環につながり、ひいては持続可能な社会の構築につながります。

 

ここまで、環境債の種類や発行によるメリットをご紹介しました。

今後、ESGの観点が普及拡大していくことで、環境債の活用は今後も拡大することが予測されます。持続可能な企業であるためにも環境債への理解を深めておくことは欠かせません。環境債への理解を深め、発行の検討につなげていただければと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。